2025/09/10 23:03


花のみやこか、懐かしきふるさとか――。
日本列島の文化の歴史は、海の外からやってきた
最新の情報があつまる都会への憧れと、
生まれ育った郷土への思い入れのはざまで紡がれてきた。
奈良、京都、のちには江戸・東京という「みやこ」に対する
「地方」の憧れと反発、さらに中国大陸や欧米という
「中央」に対する「辺境」日本の憧れと反発という
二重の交錯を見据え、そこに織りなされる綾を丹念に描き出した
唯一無二の列島文化史。



夷なる日本が華なる中国に劣らないと主張した
京都生まれの伊藤仁斎と、関東出身で田舎固有の文化に価値を見出し
江戸学芸を京から自立させた荻生徂徠。
日本文化や日本的なるものの一貫性を否定した内藤湖南と
「国史」の範囲に苦悩した黒板勝美。
日本文化が基底のところで一体のものであることを
前提にしたことで「郷土を捨象した」と批判された、
民俗学の父・柳田国男が敬意をいだいていたのは、
田舎に「いにしえのみやび」を見出した本居宣長だった。
古代の青銅鏡が示す畿内王権や記紀神話にはじまり
現代にいたるまで時代を縦横無尽に扱いながら、
独自の視点で日本文化の形を照らし出す。(原本:平凡社、1991年)出版社